【仁義なき戦い】アンパンマンジュースの自販機の前で。
負けられない戦いがある。
かかりつけの小児科の玄関には、アンパンマンジュースの自動販売機が設置してある。
とにかく、うちのヤー坊、受付に行くまで時間がかかるのだ。
そう、このアンパンマンジュースを買ってと、ごねまくるから!!
あの日もそうだった。
小児科に着くやいなや、一目散にアンパンマンにMAXハイテンションで近づき、挨拶を交わすヤー坊。
アンパンマンは、今日もいつもと変わらぬ笑顔で迎えてくれる。
わかってた。わかってたんだ、こうなることは。
毎度の事なんだから。
なだめになだめる作戦に出る。
全部終わったら帰りに買う約束をしよう!
「お医者さんに診てもらって、帰るときに買おうね?わかったひとー?」「はーい!」
、、といった3秒後には、また駄々をこねている。
いやいや、全然わかってないじゃんか!!
そうだ、待合室の絵本で釣ろう!
「ほら、アンパンマンの本あったよ。一緒に見よう」
チラっと、こちらを一瞥しただけ。来る気は無いらしい。
同じアンパンマンでも、ジュースの威力はすごいのだ。
もう、これはちょっと怒ってみるか。
「今はダメだって!早く来なさい!」
「、、、うぇ~~ん!!」
あー、大泣きだ。やっぱりこういう時怒ると、火に油だ。
待合室の人達の視線が痛い。
イライラしてる人もいるだろう。
お母さん気持ちわかるよ、大変だよね!と、共感してくれているであろう人の視線も感じる。
ヤー坊はいよいよ今は買ってもらえないと悟り、パニック!
アンパンマンに全然聞き取れない宇宙語(しかも大声)で話し掛け、
何を思ったか、お釣が出てくるところを何回もチェックし(なんも入ってないから!いやらしいから、やめなさい!)、
最終的には、その場に大の字になってピクリとも動かなくなるという暴挙に出たのだ!
勘弁してくれよ。
もうこうなったら力ずくだ。
こっちだって譲れない!
アンパンマンジュースは、
今は絶対に買ってあげない!!
ところで皆さん、2歳児男子の本気の力をご存知だろうか、、?
いや、これが本当にすごいんだ。
どこにあるんだい、そのパワー。
36の大人が、2歳のマルコメ坊主と、対等にやり合うという地獄絵図。
ヤー坊は今、アンパンマンジュースを買ってもらうという野望に、渾身の力を振り絞って、全集中している!
本能で生きている2歳児を、なめてはいけない。
一瞬一瞬を全力で生きている2歳児を、侮ること無かれ。
でもこっちにも、意地とプライドがあるんだ!
今負けてたまるものか!
人生そんなに甘くないからね!
、、、すったもんだの末、ついに私は勝ったのだ!
愚図るヤー坊を小脇に抱え、受付を済ませることに成功したのだ!
やってやった!
これが36歳の力だ!
どんなもんじゃい!
大人気ないと思われても、勝たないといけない時がある。
親の威厳を見せるべき時がある。
受付を2組の親子に抜かされたって、それは仕方ないのだ。
こちらは仁義なき戦い真っ最中だったのだから。
診察もお会計も終えたあと、
約束通りアンパンマンジュースを買いに向かう。
先ほどまで戦場と化していた自販機の前に、今は驚く程穏やかな気持ちで立っている。
ヤー坊とおててを繋いで。
さぁ、ヤー坊。
お約束のアンパンマンりんごジュースだよ!
お飲みなさい。
ニコニコ笑顔のヤー坊。
激闘の末、80円で見れた大好きなこの笑顔。
なんとも清々しい気分だよ、母ちゃんは。
ところでアンパンマンさんよ。
うちみたいな親子相手に、毎日一体いくら稼いでいるんだい?